10分創作#1「不満げな鳴き声」
不満げな鳴き声
ふわりと足に彼女の肢体がまとわりつく。
ああ、うん。もうちょっとだけ。
もうちょっとで仕事が終わるから。
君が来るまではいつだってスランプで
あともう少し、もうちょっと待ってとか考えたこともなかったけれど
今は、それがちょっと嬉しい。
うん、やっぱり書くことが好きだ。そう実感できる。
足の甲に彼女の前足が乗る。
ふわりとした感触が、しっかりと重さを持つものに変わった。
もうちょっと、もうちょっとだから。
優しく声をかけるも顔は画面を向いたまま。
頭の中の言葉が、カタカタとキーボードから世界に生まれる。
うん、いい感じ。そう、次は・・・・
トッ!!
音に反応して顔を放すと画面の隣に君がいた。
目が合う。だいぶご立腹のようだ。
「ニャー」
追い討ちをかけるようにわかっていますか?の声。
いつも鳴かない君の声。
ごめん。ごめん。
手を伸ばすとすかさず頭を差し出して、ゴロゴロと喉を鳴らす。
あぁ、うん。
君が一番大事。
筆が捗るのはちょっと君の声が聞きたいからかもしれない。