つれづれなるがままに

つれづれなるがままにひぐらし。すずりにむかいてこころにうつりゆくよしなしごとをそこはかとなくかきつくれば、あやしうことものぐるおしけれ。

10分創作#6 「おやつで誤魔化す」

おやつで誤魔化す

僕は怒っている

いや、戸惑っている

朝起きて、ご飯を食べに行って、ご主人の足元にすり寄ったら

上からご主人に何かを落とされた

危うく何かの下敷きになるところだった

怒られるような何かをしてしまったのだろうか

いや、僕は何にも悪いことなんかしてないぞ

ただいつものようにご飯を食べて足元にすり寄っただけなのに

なんだったんだろう

考えたくはないけれど

ご主人は僕のことを嫌いになってしまったのだろうか

ご主人は僕の敵なのだろうか

いない間に考える

出て行った方がいいのかな

帰ってきたらもっと悲しいことされるかな

ならばいっそ

ぐるぐるぐるぐる

僕もご主人のこと嫌いに、、、なれ、、、ば

しゅんとする

寝坊助だし、起こさないと起きてくれないし、危うく会社にだって遅刻しそうになるし、たまに僕の昼ごはん忘れるし、忙しいとかまってくれないし、

 

でも

なんだかんだ言って気づいてくれるし、眠いって言いながらも最終的には起きてくれるし、撫でてくれるし、うるさくしないし、ご飯もくれるし、寒い時は布団に入れてくれるし、笑った顔がなんかいいし、ゴツゴツした手も気持ちよくはないけど優しいし、何よりそばにいて心地いい

 

あぁ、うん、そばに、

そばにいちゃあいけないのかなぁ

なんだかどんより

6月の天気みたいだ

はぁ、とため息をついて、ご主人が脱ぎ捨てたパジャマに潜りこむ

うん、ご主人の匂い

なんだか疲れたな

 

 

ガタン

気づけば真っ暗でどうやら僕は寝ていたらしい

この気配は御主人だ

部屋に明かりがつく

どうしよう、見つかったら追い出されてしまうかな

もう少し寝たふりをしていようかな

そんなことを考えていたら布の向こうからご主人が覗き込んだ

 

「ここにいたのか、ただいま、探したよ」

怒ってない?

いや、まだだ、罠かもしれない

伸ばされた手はいつも通りで、優しく僕の頭を撫でる

尻尾で僕は抗議する。優しくして捕まえて追い出そうったってそうはいかないぞ!

 

「なんだ、おこってる?」

そう笑って、ブラブラと縦長いものを僕の目の前に持ってきた。

ご主人が封を切る

この匂い!おやつ!!

「お!!やっぱりわかったか、鋭いな。今朝はごめんな。わざとじゃなかったんだ」

ご主人が笑顔で顔をすり寄せる

どうやら本当に怒ってなさそうだ

なぁんだ

おやつで誤魔化そうだなんて、そんな!

でもいいや、今日は誤魔化されといてやろう

寂しくて悲しかったなんて絶対知られないようにね